道路拡幅を計画、 土地買収も進む
このような背景から70年代この道路の拡張工事が行なわれることになった。 当時の計画は車道面が6.5mという広いもので、 さらに歩道の拡幅をふくめて、 通り全体の拡張が計画された。 そして計画決定も済み、 一部の建物はすでに取り壊しが終わり、 残りも順次とりのぞかれる予定であった。
この道路計画では、 ウイルヘルム・ロイシュナー通りの道路を拡張することと、 もう1つ内側に道路を新設して村の中心部に環状路線をつくることが考えられていて(村はまさに車に占領されるところであった)、 この計画のため役所はその関連土地を買い占めていた。 実はこの土地が後になって大変有効に働くことになる。
その後、 ロスドルフはヘッセン州の、 9年間の建設助成金のついた、 農村整備計画プログラムの適用を受けることになった。 「都市計画グループダルムシュタット」(Plaungsgruppe Darmstadt)がこの計画依頼を受けたのは1985年である。
このような、 たとえば農村整備計画とか地区再開発のような大規模な計画とか、 役所内では処理できない高度な知識が必要なプロジェクトは民間の都市計画事務所に委託することが多い。 また小規模でも団地計画のように独立した計画は、 役人の数をふやさないために外に出されることがある。
農村整備計画の趣旨の1つは「歴史的な地域特有の景観と環境の保全と維持」である。 ロスドルフのように、 中世からのせまい道路に高密度に家がたち並んでいる町では、 交通増加に対処しようとする場合、 町並み景観への問題が起きてくる。 交通問題を最上位において解決しようとすれば、 この例でみられるように地域特有の景観の破壊につながり、 将来取り返しのつかない景観上大きな損害となり、 地域景観の保全と維持という農村整備計画の目標に相反することになる。
都市計画で交通問題と取り組む場合、 その目標は、 地域の環境や景観を考えながら車の通行はもちろん歩行者や自転車にも安全であるような交通計画を作ることである。
計画の見直し
ここで従来までの、 道路計画を新しく考えなおすことになる。
とはいうもののいくら良い案でも、 すでに計画決定し建物とりこわしが半ばまで進行している計画をここにきてホゴにするのは生易しいことではない。 しかしその1985年という時期がよかった。 この時期になって世間一般の風潮が、 クルマ至上の経済一辺倒で住環境を無視した道路拡張に批判的になったこと、 それに加えて国の新しい道路法(EAE 85/95)で市内では「道路は歩行者が逍遥する場所でもあること」といった項目が付け加えられ、 道路幅が最も狭いところで、 トラックがやっと2台すれ違うことが出来る、 4.5mが可能になった。
都市計画グループダルムシュタットはこの福音書をもって、 時間をかけて2つの機関を説得する:1つは役所の議会であり、 もう1つは州の道路局である。
ウイルヘルム・ロイシュナー通りの見直し計画の骨子は
(1)必要かつ充分な道路幅を考慮する
(2)道幅が狭くみえるような視覚操作によってクルマをゆっくり走らせる
(3)地域特有の建物保持によって地域景観を保存する
(4)通過交通を阻害して住環境を改善する
などである。